この世界の平和を本気で願ってるブログ

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イスラエルの人権団体べツェレムによるバイデン大統領への公開書簡

掲題の公開書簡の内容が簡潔にまとまっていてかつイスラエルに対する思想的な立場の如何に関わらず説得的な内容だったので全訳してみます。この内容に賛同できると感じたならばまずは首相官邸および外務省のサイトからイスラエルに停戦するよう働きかけてという旨の意見を送りましょう。できることはやっておくに越したことはありません。

 

元ツイートはこちらです。https://x.com/btselem/status/1734874006459666894?s=20

 

以下、拙訳(強調や注は訳者による)

 

親愛なるバイデン大統領へ

 

ガザ地区における人道的大惨事について

 

ハマスイスラエル市民への恐ろしくそして犯罪的な攻撃-すなわち、イスラエル市民に加え、外国籍の市民や子どもを含む1200人以上の人々を殺害し、さらに250人もの人々をガザ地区に誘拐したこと-を行って以来、ガザ地区における戦争(注1)はもう9週間以上も続いています。攻撃の直後、イスラエルにて行ったスピーチで、あなたはイスラエル自衛権を明確に支持すると同時に、その行使が国際法の規定、とりわけ戦争のルールに基づいてなされなければならないことを強調しました

 

私たちイスラエルの人権団体や市民団体は、この時点において、私たちの政府があなたの助言や他の米国高官による同様の発言を無視することを選択したと誠に遺憾ながら明言しなければなりません。この書簡は、イスラエルによる戦時下の国際人道法への違反についての重大な疑惑についてのものではなく、あくまでガザにおいて拡大している極めて深刻な人道的危機と、この事象に対するイスラエルの政策を変えさせる喫緊の必要性を主題としています。(注2)

 

戦争が始まって以来、イスラエルの政策はガザにおける人道的危機を大惨事という局面まで推し進めてきました。そして、このことは戦争の必然的な帰結というだけではありません。この政策の一環として、戦闘が始まってからほどなくして、イスラエルはガザへの電気と水の販売を停止し、国境を封鎖し、あらゆる食料、水、燃料、医薬品の入国を阻みました。その後、ガザの南側への水の供給を部分的に再開しましたが、電気なくしては、住民の大多数が安全な飲み水を手に入れられません。10月21日以降、イスラエルはラファフ検問所において支援物資と少量の燃料の部分的な入国を可能にしたものの、これは絶え間ない爆撃-その犠牲者はガザ保健省によると18000人にのぼり、その多くは子どもと女性です-に晒されている住民の増大するニーズを満たすには遠く及びません。

 

ハマスが人質をイスラエルへと解放することは肝要です。しかし、人道的支援物資のガザへの流入を許可することは、イスラエルにとって良心的な行為ではなく、義務の一つです。国際人道法の定めるところによれば、武力紛争下の住民が入手可能な物資だけでは生存できない場合、紛争当事国は食料と医薬品を含む人道的支援物資の早急で阻害されない流通を可能にする積極的義務があります。この義務は、支援物資を必要とする住民が相手国側にいたとしても発生するものであり、支援物資の流通を円滑にするため、もしくはより容易にするために重要な地理的位置にある国家が負うものです。この責務を履行しないことは戦争犯罪にあたります。

 

国連機関や人道団体は、ガザの状況が凄惨であり、住民たちを助ける手段はほぼ尽くされていると報告しています。通行が許可されているトラック数台分の物資-報告によれば、大海の一滴に過ぎません-も、イスラエルによる継続的な爆撃、インフラの破壊、そして地区全体の封鎖によって配布することが不可能となっています。これにより、200万人以上の人々が飢え、渇き、適切な医療的ケアにアクセスできず、水不足や不衛生的な人の過多による感染症の拡大に晒されています。この想像を絶する現実は日に日に悪化しています。

 

あなたには、イスラエルの法的な義務とガザ地区の住民のニーズに基づき、政策を転換し、ガザへの人道的支援物資の流入を可能にするよう、私たちの政府に働きかける力があります。ガザにおける支援物資の配布、および必要な物資の量に関する決定を行うべきなのは、イスラエルではなく、現場にいる国連機関と人道団体です。ケレム=シャローム検問所を開放し、人道的支援物資の継続的で制限なき通行を可能にすることの緊急性は疑いようもありません。

 

私たちは危機の最後の局面にいます。まだ多くの命が失われることを阻止できます。イスラエルは今すぐに政策を転換しなくてはなりません。(注3)

 

心を込めて

 

(各団体による署名)

 

(注1)訳者の立場によればイスラエルが行っているのは戦争ではなく一方的なジェノサイドであり民族浄化です。ここでべツェレムがこの事象を「戦争」と呼んでいるのは、バイデンを含むイスラエルの政策の支持者に対する戦略的な譲歩と思われます。すなわち、「仮にこれが戦争だとしても、戦争においてもやっていいこととダメなことがあり、イスラエルはダメなことをしている」という論法です。

 

(注2)イスラエルが行っていることが戦争だとしても、本来であればイスラエルによる戦時下の国際法違反(例えば、非戦闘員を巻き込んだ無差別な爆撃やジャーナリストの殺害など)も俎上に上げるべきです。ここでべツェレムがあえてそうしなかったのは、またしても戦略的判断であり、この論法によってバイデン大統領とその支持者を説得するのが困難だと判断したからだと思われます。なぜなら、イスラエル側はこうした国際法違反をハマスによるプロパガンダだと否定したり、戦争に犠牲は付き物だと開き直ったりすることができ、バイデンとその支持者もそれに賛同することが予見されるからです。一方で、イスラエルガザ地区を封鎖し、支援物資の流入を防いでいることはイスラエル自身も認めています。そのこと自体が戦争犯罪に値すると指摘することは、イスラエルの政策の非人道性を明らかにする上で効果的と言えます。

 

(注3)訳者の立場によれば、イスラエルは支援物資の流入を可能にするだけでなく、ただちにあらゆる破壊行為を停止し、ガザ地区の封鎖を解除し、ガザ地区および西岸地区における入植をやめ、占領しているすべての土地をパレスチナに返還し、パレスチナ人に対するアパルトヘイトを撤廃する道義的義務があります。