この世界の平和を本気で願ってるブログ

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イスラエルについての覚え書き

国家: ある領土内における正統な暴力の行使を占有する共同体(ウェーバー)

 

国民(ネイション): 想像上の、有限で、主権を有する政治共同体(アンダーソン)

 

ナショナリズム: 国家の範囲と国民の範囲が一致すべきであるという政治的な信条(ゲルナー)

 

この三つの等号が成り立つ限り国民国家の成立と維持には必ず暴力が伴う。なぜなら、あらゆる国家の領土内にはマイノリティが存在し、国民国家を成立させ維持するためにはそうしたマイノリティを暴力的に捨象しなければならないから。その究極的な手段がジェノサイドである。

 

とりわけアメリカやカナダ、オーストラリア、そしてイスラエルといった入植型の国民国家(元々人が住んでいる土地を奪って建てられた国民国家)の成立と維持は必ずジェノサイドを伴う。その土地に元々住んでいる人々の存在を否定しない限りその土地に国民国家を成立させることはできないから。

 

もちろんイスラエルパレスチナに固有の文脈はある。だがジェノサイドが起こっている構図自体は宗教や歴史に頼らずとも上のような一般的な理論で説明できる。だから大局的に見て、イスラエルパレスチナのどちらが抑圧者であるかは明白であり、それを覆す特有の事情などどこにも存在しない。

 

なので、次の三つのことが言える。

 

1. イスラエルは特別な国家ではない。イスラエルは特別に善いわけでも、特別に悪いわけでもない。イスラエル国民国家であり、他のすべての国民国家と同様に(アメリカのように、ドイツのように、日本のように)ジェノサイドへの契機を秘めている。今イスラエルがジェノサイドを行なっているのはイスラエルに特有の事情があるからではなく、国民国家がジェノサイドへと向かう政治経済的な条件が整ったから。この点を見誤るとイスラエルへの抗議は容易に反ユダヤ主義へと転化してしまう。逆に言えば、本来イスラエルに抗議することは全く反ユダヤ主義的ではない。

 

2. 固有の文脈を知らない者は口を出すな、というのはジェノサイドを肯定する人の言い分でしかない。歴史をどのように解釈しようとも、人権の存在を認める限り、ジェノサイドを肯定できる理由など存在しない。だから不勉強を理由に声を上げるのを躊躇う必要はない。

 

3. 敵はイスラエルである。しかし敵はアメリカでもあり、日本でもある。敵はあらゆる国民国家である。仮にパレスチナの人々が今回の事態を生き延びた後国民国家を建設しようとしたら、究極的にはそれすらも自分は否定するだろう。全ての人の人権が実質的に保障されるには、国民国家に代わるような新しい政治共同体をつくる必要がある。それがどのようなものかは自分にも分からない。だけど国民国家に帰属することでしか権利を持つことができない今の世界のあり方が続くのであれば、ジェノサイドはずっと起き続けることは明白である。