今年の紅白がめちゃくちゃつまんなかったのはずばり去年のAI美空ひばりゾンビ召喚コーナーが無かったからだと思います。あのコーナーは毎年続いても良いくらい面白かったですが、今年はさすがに倫理的にアウトだと判断されたんですかね(それでやめるくらいなら普通に最初からやめとけよって思いますよね〜)。
美空ひばりを「復活」させたのは確かに本人ひいてはあらゆる死者に対する冒涜です。しかしエンタメ的にもっと許されないのはその冒涜を「美空ひばりを偲んでほにゃほにゃ」とか「AIの可能性をほにゃほにゃ」とかいうクソどうでもいい理由で正当化して美談にしようとしたところです。
倫理的に救いようのない行為を正当化しようとしたところで無駄です。それでもどうしてもやるというのならせめて徹底的に露悪的に、悪趣味の限りを尽くして行うべきだったのです 。せっかく美空ひばりを意のままに操作できるのであれば、本人の曲だけじゃなくていろんな人の歌を歌わせるしかないでしょう。一昨年の紅白で言えば、「シンクロニシティ」「紅蓮花」「花火」「純烈のハッピーバースデー」とか見たかったなあと思います。
しかし毎年美空ひばりに早すぎた埋葬使うのはもったいないですよね。せっかく墓地リソースが沢山あるならもっといろんなモンスターを蘇生すべきです。私がNHKのえらい人になって次のアンデッドボカロ枠を選定できるなら、迷わずこの人にするだろうという人が一人います。そう、尾崎紀世彦です。
正直私はこの「また逢う日まで」しか尾崎さんの曲は知りません。でもこれだけで上手すぎて笑えてきますね。歌詞の悲しさをものともしない圧倒的な声量が爽やかさすら感じさせます。これを蘇らせずしてどうしろというのでしょう。
また、尾崎紀世彦も美空ひばりも歌うま超人ですが、しかし前者には後者にない長所があります。それは生前他の人のいろんな曲をカバーしていて、しかもどれもめちゃくちゃ面白いという点です。
私が一番好きなのは、少し前にTikTokでちょっとバズったこちらの映像です。
やばすぎませんか?初っ端からめちゃくちゃ面白いですよね。しかも何度聞いても新しい発見があります。私は最近「陽の当たる坂道を昇るその前に〜」の最後の「に〜」にハマってます。
他にもこんな曲もカバーしてたりします。
「幼い微熱の〜」の声量が微熱どころではなくてツボです。しかし中山秀征がウザいのでマイナス2億点です。
あと個人的にウケたのがこれです。
そもそも原曲がウケるのでこの声で歌われたら面白いに決まっています。マルシアさんも昭和のチープなエロを表現していていいですね。
このように、生前の尾崎紀世彦さんは割と節操なくいろんな曲をカバーしていて、どれも見事に自分の曲にしてしまっています。尾崎さんは惜しくも2012年に亡くなってしまいましたが、その声は墓地に置いておくにはあまりにも勿体なさすぎます。
AI美空ひばりで善悪の境界線を踏み越えた今のNHKであれば、尾崎ロボ彦を操って近年のヒット曲を片っ端から蹂躙できるはずです。そして2020年最大のヒット曲であるあの曲こそ、尾崎紀世彦さんにぜひともカバーしてほしかったと思いませんか???
もうこうなったら今年の紅白でも良いです。NHKさん、お願いです。尾崎ロボ彦に香水を歌わせてください。それは確かに死者への冒涜です。しかし、生きている私たちの糧として、死者を消費するような表象は、何もAI美空ひばりに始まったことではなく、日本、ひいてはあらゆる近代国家のお家芸です。ならばせめて、国民統合と、国家の無謬性を保持するための歴史の改竄というクソどうでもいい「大義」のためではなく、ただ単に尾崎紀世彦が香水を歌うのを聴きたいという欲望を満たすために、その技術と資源を動員してください。